「ノーコードって、話題にはなったけどまだまだ一般向けに普及してないよね」
最近こんなことを思うようになりました。Webライターの西山です。
ノーコードをもっと皆さんに活用してもらいたくてNoCodeメディアで情報発信しているのに、こんなことを言うのは「お前らの啓蒙活動が努力不足だからだろ!」と言われるかもしれません。
とはいえ、一般の方にはまだまだノーコードは普及されていないのは事実。(ここで言う一般の方は「IT関係の仕事に就いていない方」を指します)
プログラミングでさえ、やっと学習できる環境が整いつつある中で、一般の方がNoCodeに目を向けるのはもう少し先になるのかもしれません。
そこで今回はNoCodeのコンサルティング、受託開発に加え、書籍「ノーコードシフト」を出版した安藤さんにNoCodeがもっと多くの方に普及するために必要なことを聞いてきました。
【ゲストプロフィール】
安藤昭太(@ando_engineer)
ノーコードコンサルタント/合同会社sowacana代表
大学卒業後、富士通入社。独立後エンジニア経験を活かし、社会課題をITで解決する会社を立ち上げ、様々な社会課題の解決にエンジニアとして関わる。その後エンジニア人材育成事業を経て、ノーコード事業を開始。大学機関や企業、NPOなど社会性の高い事業をメインにノーコードによる新規事業開発や業務改善のプロジェクトに参画している。数社のCTOとしてノーコードサービス開発を行う。
NoCodeは話題になったのに普及してない?
安藤さん今日はよろしくお願いいたします!
一つお聞きしたいのですが、ノーコードって普及してないように思うんですが、安藤さんから見てどうでしょうか。
おお…!
急に確信的な質問ですね笑
でも確かに、ノーコードはまだまだ普及しているとは言えませんね。
ノーコード界隈の大きな課題です。
「簡単にアプリを作れる」は、簡単ではない!?
ノーコードってアプリやサービスを簡単に作れるツールというイメージですが、そもそもアプリを作る、ということ自体を難しく感じているのではないかなと思うんです。
簡単かどうかって、経験がないと分からないものだと思っているんですよ。
そうそう!その通りだと思います!
今のノーコードの啓蒙活動は、どちらかというと「アプリを作りたいけど難しくてできない」という人がターゲットになっていると思います。
でもそのターゲットばかり狙っても、ノーコード普及の根本的な部分は解消されづらいのかなと感じました。
ノーコードでも難しいと感じる人たちを、もっと巻き込んでいかないといけないなと。
そのためには、やはり要件定義を少しでも理解できるようにならないといけないですね。
出た!初心者の第一関門、「要件定義」!
「アプリを作る」こと自体がハードル高い
エンジニア経験がある方やITに抵抗感がない方からすると、要件定義も学習できると思うんですが、ITに感度が低い人たちからするとやはり難しく感じますよね。
要件定義は皆さんが難しく感じる部分ですからね。
アプリを作るのであれば要件定義は必要なので、アプリ作りのハードルの高さに直結していると思います。
最近は「ノーコードを学習する際は要件定義も初めのうちから学ぶべき!」ということも言われてますが、そうなると一般の方は取っ付きにくくなっちゃうというデメリットもありますよね。
そうですね。
だから初心者の方は要件定義を学習するというよりは、作りたい物がどんな機能や要素が集まって組み立てられているのかを考えるということから始めるといいかもしれません。
あとは筋肉トレーニングと同じように、ノーコードを実際に触って練習するのが一番ですね。
とは言っても、「やるぞ!」というモチベーションもいつかは下がってしまうと思うんですが、どのように対処したらいいんでしょうか?
自分の身の回りにある悩みや課題を解決するためにノーコードを使う、という意識だとモチベーションも下がりにくいと思います。
ノーコードは、そもそも問題解決のためのツールとしてすごく優秀なので活用法としては最適かと考えています!
なるほど、問題解決のためのツールですか!
そう考えると確かに、ちょっと頑張ってみようかなという気持ちになりますね!
NoCodeが普及するには「三種の神器」になること!
では問題解決のツールとしてノーコードが普及するために、どのようなことが必要だと思いますか?
今の時代で普及していないという課題を解決しようと思ったら、やはりITは重要なんだよと認知してもらうことが大事ですね。
ITは軽視されている!?
ITが重要だと皆さん気付いてないということですか?
そうですね、なんだか、ITは軽視されているのではないかと思っています。
どうしてそう思うのでしょう?
例えば、経営をするうえで「経理・財務」「法務」は絶対に理解しておかないといけないじゃないですか。
そうですね。
お金の計算間違えたり違法なことしたりして会社が潰れちゃいますもんね。
でも現代社会だとIT無しではビジネスが成り立たなくなってきているにも関わらず、ITを絶対に学習しないといけないというレベルにはないんですよ。
確かに、税務や法務ほどは勉強しておかないといけないとは感じないですね。
ITの仕事をする人だけやっておけばいい、みたいな感じ。
でもそれじゃダメなんです!
この政府によるDX推進を機に「財務」「法務」「IT」というような三種の神器にならないと、国内だけの問題ではなく海外との差も大きくなってしまいますから。
意思決定するレベルのビジネスマンは、税務・法務・ITが必須科目ですね!
ITやプログラミングはオタクの人が扱うもの
そんなに大事なジャンルなのに、どうして学ばれないんでしょう…。
やはり専門性が高いというのは理由にあると思います。
でも税務も法務も専門性高いですし、どちらかというとITを勉強するよりも難しいような気がします…!
ITアレルギーのようなものは日本人特有なものかもしれません。
例えば、プログラミングをガッツリやるのは「オタク」気質に見えてしまうというような…。
ああ…。
専門性が高いという理由よりも、なんかしっくり来る気がします。
でもそういったネガティブイメージも、プログラミングが義務教育になったりプログラミングスクールが増えたりしたので変わりつつあると思います。
確かに、プログラミングを学ぶ人は増えてきてるし、義務教育化によって親世代の見方も変わりますね!
プログラミングが普及すればノーコードも普及するのか
プログラミングが普及すれば、ノーコードも併せて普及するんでしょうか?
僕はノーコードの方が普及するんじゃないかと思っています。
え!そうなんですか!?
あくまでも僕の見立てですが、プログラミングが義務教育化すれば親御さん達は「プログラミングを使う職に就けば安定だよね」という認識になると思うんです。
ひと昔でいう、英語学習のような感じですね。
そうですね!
現在では、純粋に英語が好きな人や絶対にTOEIC高得点を取得しておきたいという人が英語を学習するのと同じように、プログラミングも純粋に好きな人たちはプログラマーになって、開発を手段としてプログラミングを学ぶ人はノーコードに寄っていくと思っています。
プログラミングは絶対に無くならないので、プログラミングとノーコードは二項対立ではなく、開発によって変わるグラデーションのような関係性になると思いますね。
なるほど…!
まだノーコードの世界もプログラミングの世界も狭いので二項対立のように感じますが、今後はそういう考えもなくなるでしょう。
ノーコードやITの普及は英語学習やクラウドと同じ?
話をしていると、ノーコードの広がり方って、過去の英語やクラウドと同じだなと思いました!
え?どういうことですか?
1970年代は、英語の中でもアメリカ英語とイギリス英語でどちらが良いかという議論があったそうなんです。
でも、今では全然そんなこと言われないじゃないですか。
むしろ日本語英語でよくない?と言われる時代ですよね。
確かに、僕もバイトしてるときにカタコトの英語でしゃべっても海外の方に問題なく通じてました。
例えば、僕は2003年に留学経験があるんですが、そのときは英語ができれば一生食いっぱぐれないと言われていたんですよ。
でも今は英語って普及しまくってるじゃないですか。
ノーコードやITと同じ流れだ…!
そうなんです!
そして、2006年にAWSで話題になった「クラウド」も同じなんです。
10年前は「クラウドなんてセキュリティ的に危険だ」とか「AWSなんて、おもちゃみたいなもんだ」と言われていました。
でも、15年という長い時を経て、やっと普及し始めているんですよ。
そのお話しを聞くと、ノーコードも今後絶対に普及するように思えてきました!
そのためにも今のうちにアンテナを張って、ポジション取るために頑張っておこうと思うんですよね。
ITを知らないと、今後の経営の舵きりを間違えることだってあり得るんですから。
自分自身の幸せを追求するためにノーコードを使おう!
なんだかノーコードの普及する未来が見えてきました!
でも、具体的にどのように普及していくんでしょう…。
話が最初に戻ってしまいますが、やはり市民による活用が不可欠です。
そこに戻ると、少し普及に影が出ちゃうような気がします…
実は、僕はあまりそうは思ってないんですよ。
なぜですか?
LGBTやSDGsなど、現代社会では社会の課題や人の価値観が多様化しています。
それに伴って個人間での悩みはより深いものになっていくでしょう。
確かに、個々人の悩みを解決するために汎用性の高い商品やサービスではなくて、専門性の高い商品やサービスが増えていきそうです。
そうですね。
そして個人に合わせた悩みや課題を解決するものを企業側が一つ一つ提供するのは無理に近いです。
そうなると必然的に「自分の課題は自分で解決できるようになっていく」と僕は想定しています。
なるほど…!
個人の課題解決という点で言うと、少し前は悩みや課題をGoogle検索で解決方法を検索していましたよね。
でもGoogleの信頼性が徐々に失われていって、今はSNSでの情報収集が増えています。
もしかすると、それがそのうち「情報は信用できないから、自分で課題を解決できるようになるのが一番良いよね」となれば、ノーコードは一気に普及するかもしれませんね!
そうなんですよね!
より個人が大事にされて、より個人の幸せを追求できる世の中になっていく。
その中で、使う人の分母は少ないけど満足度はめちゃくちゃ高いみたいなことがいろんなところで出てくると思っています。
自分の幸せのためにノーコードという手段を選ぶ時代が早く来てほしいですね!
安藤さん、本日はありがとうございました!